ゾーンプレスとは80年代後半から90年代にかけて浸透した守備戦術。イタリアのアリゴ・サッキ監督が世界的に有名にした戦術と言われているが、「ゾーンプレス」と呼んでいたかは定かではない。日本で「ゾーンプレス」という言葉が浸透したのはJSLの全日空を率いていた加茂監督の影響だと思われる。加茂監督はスロベニアからズデンコ・ベルデニックさんをコーチとして招いてゾーンプレスを浸透させようとしていた。
新しいことを0の状態から始めるのは骨の折れる作業です。加茂監督はテレビの解説(特にWOWOWで)でわかりやすく「ゾーンプレス」について語っていた。いろんなテレビ番組を通して、サッカーでは戦術が重要なのだと説いていた。チームの力を合わせればどんなに強い相手にも勝つことが可能。それがサッカーとテレビを通して教わっていました、勝手に。サッカーの戦術について興味が湧くような話が聞けてワクワクしたのを覚えています。
で、簡単にゾーンプレス。
スペースを限定して、そこにプレス、プレッシャーをかけ、相手から積極的にボールを奪うのがゾーンプレス。スペースという曖昧な表現はここでは放って置いて、簡単に。
相手に対してプレッシャー(精神的にも)をかけてボールを奪う。アグレッシブに追いかけて動き、相手に積極的にプレッシャーをかけてボールを奪い取る守備戦術。
ここでは現代的なゾーンディフェンスに「積極的」をつけたのがゾーンプレスだと解釈しておく。ゲーゲンプレスとは違うの?とか思うかも知れない。それもここでは放って置いて。
ゾーンプレスを導入するためには、選手にはインテリジェンスがなければならない。守備の状況を把握できるインテリジェンス。ゾーンプレスはひとりでやるわけではなく、グループとして意図的に行うものなので、個々の役割分担が必須になる。相手の選手がゾーンに入った時にグループとして、いつ行くのか?だれに行くのか?いつ?だれ?のタイミングをグループとして共有できなければならない。
ボール保持者には必ず1人はプレッシングに行きながら、2人目、3人目の守備者が1人目が抜かれた場合のカバーリングも意識しつつ、相手にスペースを与えないポジションを取らなければならない。いつプレスに行くのか?を理解する。理解していても、選手間の距離が遠ければ連動したプレスは実現できない。全体のポジショニングがコンパクトになっていなくてはならない。チーム全体にその距離感をキャッチできるインテリジェンス、戦術眼が必要になる。
80〜90年代の名選手ACミランのフランコ・バレージがこの戦術眼について抜きん出ていた。1994年のアメリカW杯決勝のバレージの動きはインテリジェンスの塊と思ったものでした。しかし、アリゴ・サッキ曰く「バレージは劣等性、マンツーマンからゾーンへの戦術変更に最も苦労した選手」としている。これはインテリジェンスや戦術眼は日頃の練習で身につくものだと言っているようなもの。
で、最後にゾーンプレスとは。
「ゾーン入ってくる相手に対し積極的にプレスをかけ、インテリジェンスを駆使しボールを奪いとる戦術である」
まさに読みたい内容でした。昨今流行りの同サイド圧縮(≒ゲーゲンプレス?)って、説明や概念を聞く限り、記事に書かれていた加茂さんのWOWWOWでの解説が思い出されました。
ボールを奪われた直後に、ボールを失った選手とその周りの攻撃的な選手が、攻守を素早く切り替えて(ネガティブトランジション)、相手のボールを再度奪うようなプレスを意味します。
↑これって、まさにWOWWOW(91-92ミラン無敗優勝時の年間まとめ的な番組)で加茂さんがこれについても触れてましたね。そしてボール奪ってからショートカウンターって感じで。
これをしっかり覚えてらっしゃる方がいてテンション上がりました。
ありがとうございます。